2011-04-06
特会の見直しよりずっと重要な問題は、地震保険の加入率がいまだ23%にとどまっていることである。「地震保険は対象範囲が狭い上、保険料が高い」と指摘する声もある。確かに、地震保険は火災保険とセットでしか加入できず、火災保険金額の30%〜50%が上限となっている。また、マスコミの報道では「満額で受け取れる例は少ない。建物の時価が基準になるほか、倒壊・傾斜の条件が厳しく、阪神大震災時の支払額は1件当たり平均100万円程度。今回も200 万〜300万円にとどまる見通しだ」(日経新聞2011年4月4日)と指摘するものもある。現場で損害の認定がどのようになされているのか分からないが、例えば「全損」に該当するには「損害額が建物の時価の50%以上」と明確な基準は存在するし、昨今の金融行政も保険会社に消費者保護を強く求めるようになっているので、一般人の期待から大きくかい離するような運用がなされる可能性は小さいと考える。
消費者の利便性の観点からは商品設計上、改善の余地は色々とあるかも知れないが、それは特会を廃止しても変わるわけではなく、今の枠組みの中で実現できることである。財務省の焼け太りを警戒するよりは、私はむしろ商品設計と支払いの現場を担う民間損保に対して、金融庁が消費者保護の観点から十分なガバナンスを働かせることこそが、重要だと考える。
地震保険の加入率を高めるために、政府はもっと積極的に動く必要がある。政府が大きな金額を補償するとしても、そもそも地震保険の未加入者はその恩恵を受けることはできない。損害保険会社からすると地震保険は利益が上がらない商品であるから、積極的に販売するインセンティブがない。いまは、地震保険の保険料に一定の税控除を認めるという形での政策的な誘導がなされているに過ぎないが、今後はこの控除枠を拡大することや(場合によっては生命保険料控除の枠をこちらにシフトしてもいいかも知れない)、損保各社が積極的に販売するような経済的なインセンティブを付与することも検討に値しよう。
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